Adrenaline Addiction

東京湾のLTアジから小笠原の遠征ジギングまで。

タイで野犬を見てきた。釣りもした。 タイ釣行記1

 

「タイはすごい。」「男なら海外釣行いけ」何度聞いただろうか。

ついに「ヤリモク」(釣り目的のこと。日本一有名な釣り人、村田基がデッケェ魚を釣った際に必ず「ヤーリー!!!」と叫びながらしょぼいガッツポーズをすることに由来している)の旅を敢行してしまった。

 

 4年の晩秋に初海外釣行、というのは海外釣行に心血を注ぐ男たちに囲まれて過ごしてきたここまでの大学生活を鑑みると、むしろタイミング的には遅かったのかもしれない。そもそも、つい最近まで海外釣行行きたいだなんて毛ほども思っていなかった。

だから、最初に友人からタイ釣行を誘われるまで、完全に海外釣行なる概念に対してはフラットな感情、むしろ胡散臭いメーカー関係者(海外釣行の有名アングラーは大体不審者のような身なりだ。)が信者にヨイショされてる界隈、というマイナスな感情しか持っていなかったのだ。

 

 しかし、悲しいかな不完全燃焼感と暇を持て余し、なおかつ彼女も友達もいない身軽な身分に成り下がった私、そして夏場に釣果や人間関係、夏競馬など、色々な意味でボコボコにされてしまった私には「海外釣行」が突然とんでもなく甘美で魅力的なものに思えてしまったのだ。

 

 

 なにせ身軽な身である。そうと決まれば話は早い、と言いたいところだが、そこは社会不適合者2匹。7月にとてつもない熱量をもって夏休み中のタイ行きを決めたはずが結局本格的に日程を詰め始めたのは10月中旬、航空券を取ったのは旅行3週前の11月頭。結局、発案から約5か月もあったのに、道具その他の準備は2週間でする羽目になってしまった。(しかし、後述するがこの遅れはいい方向に転がった。)

 

 旅行当日

朝から酒を飲み

飛行機に乗り

ドンムアン国際空港に夕方到着した。

ずっと寝ていたので特に書くことはない。

でも、こんなことしてると体の中にそのうち石とか血栓とかできると思う。

 

 

 

 

 さて、今回の旅の目的はタイ、バンコク近郊にある釣り堀をめぐって

メコンオオナマズ(現地名 プラーブック)

バラマンディ

ジャイアンスネークヘッド(現地名 チャド―)

ピラルク(現地名 アラパイマ)

など日本では絶対釣れない魚を釣ってしまおう、というモノである。

 

 

 

 

 まずはメコンオオナマズである。こいつはメコンと名前が付くように、メコン川に住む大型のナマズで、最大数百キロにもなる。IUCN 絶滅危惧IA類、ワシントン条約 (CITES)付属書I類に分類されている希少魚。「釣っちゃいけない魚」感がモリモリするが(ちなみに、日本で一番釣っちゃいけない魚は街中の川でジジイが餌付けしているコイだ。)、同じ絶滅危惧種のウナギだって養殖されまくってるように、タイでは至極普通に食べられているし、バンコク付近にあるいくつかの釣り堀に行けば簡単に釣れる。我々はこいつを釣ってやるためにタイ到着5時間後には海外釣行の聖地みたいな扱いをされているブンサムランフィッシングパークに着弾した。

 

 

 

道中

 

 

 

 

 

 ここはすごい。なんて言っても24時間営業の釣り堀だ。池の周りには水上コテージが並び。釣具屋もレストランも、24時間営業のコンビニもある。魚種も豊富で、メコンオオナマズはともかくとしてカイヤン(ちっちゃいナマズ)、アロワナ、ピラルク、パーカーホ(超デカくて黒くてかっこいいフナみたいなやつ)、ピラルク、ガー、チャド―、ティラピアなど、今回狙ってる魚はじつはここでほとんど釣れる。だが、ピラルクやガーを狙うためには「スペシャルライセンス」が必要らしく、それが8万バーツもするらしい。なお、狙ってなくてうっかりピラルクを釣ってしまった場合も8万バーツ取るという噂もある。サイズも大きく。メコンオオナマズに関しては200㎏級だか300㎏級までいるらしい。たしか、一番デカいサイズは2匹だけいるとか聞いた。100㎏級までは割とカジュアルに釣れるらしい。意味が解らない。

 

 

 また、値段も凄い。現地人は400バーツで釣りができるのに外国人は入場料+竿1本4000バーツ(日本円だと15000円くらい)だし、ここにガイドやエサ代、寝泊まりするコテージ代金を付けると、合計8000バーツもかかる。2人で行って1人4000バーツである。

外房のジギング船か??釣れなきゃ投身するぞ?

 

 

 

 

あと、異常に野犬がいる。バンコク近郊と言っても、中心部からは30km程度離れており、ワクチンとか打ってなさそうな犬ばかりなので狂犬病が怖い。あと、ハチャメチャにオチンチンが大きい。目の前で交尾するな。

f:id:koya_suko9:20191218015554j:plain

野犬なのかよくわからないけど、たぶんワクチンは打ってないと思う。

f:id:koya_suko9:20191218015647j:plain

これはちんちんがデカかったせいで日本の大学生2人組にちんちん犬(けん)と呼ばれることになった犬。

 

 

 さて、私たちは「絶対にガイドはケチるな」とのインターネットの先人の教えを守り、ガイド(基本は英語で意思疎通をするけど実は日本語も喋れる。)を1000バーツで雇った。エサを作り、仕掛けを調整し、仕掛けを投げ込むところまでやってくれる。私たちゲストがすることと言えば、コテージに備え付けのウッドチェアでビールを飲み、星空を眺め、twitterをし、アタリがあったらフッキングして魚と1 on 1の綱引きをする事だけである。

 

 

 

 

 

 

 最初は現地で「プラ―サワイ」と呼ばれる6㎏程度のナマズだった。写真を撮ろうとしたら、ガイドに「チイサイ!!」と言われて陸に上げてものの10秒ほどでリリースされてしまった。こんな魚はハナからお呼びでない、といった雰囲気である。

あくまでも、ガイドは我々にメコンオオナマズを釣らせたいらしい。素早く次のエサの準備をし、重いエサを惚れ惚れするようなキャストで広い湖面の中央部に打ち込んでいく。聞くところによると、中央部分の水深は50mほどあるそうでメコンオオナマズを釣るならそこが一番適しているとのことだった。

 

 

 

 その時は突然きた。電池とライトを内蔵したウキがゆるやかに沈み、湖面が赤い光に滲む。竿に駆け寄る。ガイドの「オレ」が「KITA!」と叫ぶ。渾身の力でアワせる。一度の合わせじゃ足りない。2回、3回と追いアワセを入れる。もう魚は地を這うように走り出している。先ほどの魚とは明らかに異なる重さ。OBから譲り受けた、一生使わないだろうと思っていたリールのスプールが ビリビリビリ と音を立てて逆転し、夜の湖面に響く。大学入学時には考えもしなかった場所で、考えもしなかった魚と戦っている興奮が身を包んでいく。大物釣り用のギンバル(ロッドホルダー)に竿をセットし、竿の反発力と筋力でまだ見ぬ大物を少しずつ、少しずつ手繰り寄せていく。20m寄せては15m走られる。ラインが暴れる魚体に擦れて「ゴリッ」という手応えが伝わる。しかし、寄らないほどの重さではなかった。10分もかからずにそれはネットに収まった。

 

 

 

 

 

 あっけなく釣れてしまった。カッコつけて書いたけど、釣りを始めてから30分くらいで本命が釣れてしまった。お前本当に絶滅危惧種か?それから、ローションみたいなヌルを全身にまとっていて、Tシャツに付着して爆発的な悪臭を放つのには閉口した。

 

 

 さて、ヤリトリに関しては一度釣って引きのパターンを掴んだら、あとは慣れである。身体はキツイが、ボコボコ釣っていく。

 

 余談だが、メコンオオナマズの引きは「重い系」である。湾奧シーバスをする人なら「アカエイ掛けちゃったときと似てる」と言えば理解しやすいだろうか。自重と巨大なヒレで、まるで地面が動いているかのような錯覚を感じさせ、走られると「これどうすんだよ止まらねぇよ笑」と狼狽してしまう、あのトルクフルな引きである。だから、じんわりと体重をかけ続けて魚にテンションを掛ける、柔よく剛を制す、といったやりとりが本来この魚と相対する時には合っているのだろう。だが、数を重ねていると飽きてくる。多くのブンサムラン経験者が、「あそこは筋トレスポット」と呼ぶ所以がなんとなくわかってきて、マンネリ気味に何匹目か忘れた魚に合わせをくれてやると、ガイドが地獄のゲームの提案をしてきた。

 

 

「until 5 minites!! ゴフン!!」

 

 

 

そしておもむろにスマホを取り出しアラームを起動させ、爆笑しながら

「ピーチャイ、レオレオ~~~」(ピーチャイは「お兄さん」で「レオレオ」は急げという意味らしい。)と囃し立てながら手を叩いている。

 

 

 

どうやら「5分以内に釣れ。」ということらしい。

 

 

 

 時間を掛ければ、この魚を寄せるのは比較的簡単だが、時間を掛ければ、の話である。力任せに寄せるのはかなり難しい。難しいというか、とにかく体力を消耗するのである。一気に寄せるから魚も十分に体力を使い果たしてない状態で近くまで寄ってくる。だからその次のランで一気に長距離走られてしまう。死にそうになりながら寄せて、また走られてを繰り返し、ようやく手元まで寄せたところで、ガイドが先ほどと同じく爆笑しながら、今度は水が大量に入ったバケツを湖面に向かって叩きつけ始めた。満身創痍で抵抗する意思と体力が少なくなった魚を驚かせて、また走らせようとしているのである。流石にこの時ばかりは鬼の形相で「オレ!!!!やめろ!!!!!STOP!!!!マジで!!!!レオレオじゃねぇよマジで!!!」と叫んでしまった。

 

 

 

結局、この後3回ほど走られてファイト時間は5分を超え、哀れ絶滅危惧種メコンオオナマズボブ・サップにボコボコにされて「おねんね」してしまった曙みたいな脱力をした状態でランディングされ、池に再放流されていった。

 

 

 

 

結局、40㎏ぐらいまでのメコンオオナマズを4時間程度で10本以上は釣っただろうか。

途中、OBから買い取ったリールが整備不良で昇天するハプニングもあったが(なんでリールフットの裏をこんなに削っちゃうかな~)、もう十分だ。本当はパーカーホも釣りたかったが、どうやらパーカーホはこの池では希少な上に、昼間、それも午後に釣れる魚であるようで、諦めた。次回の宿題にしようと思う。

 

 

この後、水のシャワーを浴び、なんだか南国テイストなダブルベッドで男2人、もぞもぞと寝て、タイ釣行1日目は無事、終了した。(南国テイストなダブルベッドでポリネシアンセックスの話をしたのは言うまでもない)